心房細動とは?
80歳で3度目のエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎さんは、心房細動の持病を持ちながらの登頂成功でした。この不整脈は動機や息切れを起こすほか脳梗塞(こうそく)の原因にもなる病気です。 最近では新しい治療法や薬が登場し、自分にあった治療法を選べるようになりました。薬によって(=〈治療法〉〈薬〉が繰り返しになるため削除してみました)脳梗塞が起こるリスクは減らすことができます。三浦さんも治療と体力の強化によりエベレスト登頂を成功させました。このように、心房細動は直ちに命を奪う不整脈ではなく、適切な治療により、同年代の方と同様の生活を送ることが可能な不整脈です。 心房細動になると心房がいわば痙攣(けいれん)するように小刻みに震えて、規則正しい心房の収縮ができなくなります。このため、心臓の中の血液の流れがよどむことで心臓の壁の一部に血の固まり(血栓)ができ、これがはがれて心臓内から動脈に流れ、脳の中の大きな血管が突然詰まるのが心原性脳塞栓(そくせん)症です。 心房細動がある人の脳梗塞発症率は年平均5%で、心房細動のない人と比べると2倍から7倍高いといわれています。しかし、心房細動と診断されたからといってすべての患者さんが脳梗塞になるわけではありません。 逆に言えば心房細動の患者がその後どのくらい脳梗塞を起こす危険性があるかを予測することは大変重要です。現在、心房細動患者に対して抗凝固療法を開始するかどうかを決める際に最もよく使用されている指標がチャッズ(CHADS2)スコアです〈表〉。 これは脳梗塞の危険因子である心不全(C)、高血圧(H)、年齢(A、75歳以上)、糖尿病(D)があると各1点、脳梗塞の既往(S)を2点として足し算し、6点満点として計算します。この点数が高いほど脳梗塞の危険性が高いと考えられています。 脳梗塞の危険性が高いと判断された場合は、抗凝固薬(血をサラサラにする薬)の内服を始めていただくことになります。最近は食事制限が不要で副作用の少ない抗凝固薬も登場していますが、年齢や基礎心疾患(心臓病などの持病)の有無、腎臓や肝臓の障害の有無などで内服できる薬の種類や量が変わってきますので相談してください。 心房細動は、初めのうちは数時間から数日以内には自然に止まります。しかし発作を繰り返す間に、持続時間の長い心房細動となり慢性心房細動に移行すると考えられています。 これを防ぐため、心房細動から正常なリズム(洞調律)に戻す、あるいは心房細動を予防するための薬(抗不整脈薬)を服用します。薬で戻らない心房細動に対しては電気的除細動(電気ショック)を行うこともあります。 さらに最近では心房細動に対する根治療法として、原因となる心臓の一部をカテーテルで焼いて治すアブレーションという治療も有効です。発作性心房細動では約70~80%の成功率で、カテーテル治療により根治または軽快が期待できます。しかし、すべての心房細動患者にカテーテル治療が有効とは言えず、またカテーテル治療に伴う合併症のリスクも存在します。いずれの治療も、利点、欠点がありますので循環器や不整脈専門の先生と相談の上治療を決定します。
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